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産地訪問 後編 (第680回)

小布施の街を抜け、古里地区へ車を走らせます。距離にしておそらく8kmほど。

長野へ行けば必ず立ち寄る、作りたて生アイスの店ふるフルへ。
陽も傾き、夕方5時に訪れるのは初めてだったのですが、この日は季節外れの暑さで、店内のジェラートのバットはほぼ売り切れ状態。さすがな盛況ぶりをうかがい知ることができました。

店舗に隣接する駐車場の奥に広がるヘーゼルナッツ畑。これが初めて結実したことは数年前のSNSで知ったのですが、実際目の当たりにするのは今回が初めて。少し待っていると岡田さんの登場。

軽い挨拶を交わし、「ヘーゼルナッツはご覧になりましたか?」との問いに
「勝手に行けないでしょう。ちゃんとお断りしてからじゃないと」と返します。

すると、「いや、お客さんでも結構勝手に観に行かれますよ」

その言葉を聞いて、この人と、この人の想いがきちんと相手(お客様)に届いているんだな。そう感じました。



畑に足を踏み入れるのは今年の7月以来、3ヶ月ぶり。前回も散々聞いた、ヘーゼルナッツの不思議な生態。
岡田さん、8月末にはヘーゼルナッツの本場イタリアの農場にまでわざわざ足を運び、収穫の模様を目の当たりにしてくるほどの入れ込み様。弾丸ツアーの2泊5日とか?意味不明スケジュールはボクの記憶に止まりませんでした。。笑



ぷらーんってぶら下がってるコレとかなんだと思います?
もう、ヘーゼルの生態は本当に不思議がいっぱい。ぜひ長野行って見て来てください。聞いてください。

よっぽどこれは、、って書こうかと思いますけど、足を運ぶこと、経験すること(見聞きすること)が今のご時世重要だって痛感します。栗と林檎の畑を案内していただいてのそれですから余計でしょうけど。



ヘーゼルナッツを初めて収穫させてもらいました。(拾っただけですけど)

ヘーゼルの木々をかき分けて行くと、開けた空き地。
「ここの土地も御厚意でお借りすることが出来、新たに苗を植えるんです」

信頼関係とういうか、経営とは社会貢献により成り立っている。ボク自身、目指すべきって実はここで在りたいんです。常に。

利益を出すのは経営では当然ですけど、喜んでもらえること、良かったと言ってもらえることなんですよね。

自分はこう在りたい。もっと前面に出さなきゃ。

「本当に出来立てのやつです、これは貴重!滅多に食べれませんよ」

そう言って差し出してくれた出来立てソルベ2種盛り。秋の夕暮れに少し渇いた喉を潤してくれるそれらは格別。
やっぱり無言で食べてしまいますね。画像もないです。何味かも言いません。どう表現するかよりも、実際に感じてほしいからです。すごーく、すごく思います。



何よりも手探りだけど確実に前進していく姿勢です。イタリアで学んだことを現実的に落とし込んでいく。ヘーゼルナッツの収穫をより効率的にするためのオペレーションや栽培環境の詳細についても事細かに勉強されている。

決して福井から行くのは簡単ではない距離ですが、いろんな学びや気づきがあります。時間を割くのが煩わしいとは思わず、訪れてみてはどうでしょうか。




シナノゴールドとコンフィオレ




シナノゴールドの皮を剥いて芯を取り除き、捨てずにとりわけます。



芯と皮には配合外のグラニュー糖を加えてなじませてから火にかけます。鍋で火入れするのですが、蓋をかぶせて蒸らす様にすると水分が出てきます。

くし切りした林檎の中にエキスたっぷりの果汁を絞り出し、味わいをより際立たせます。



林檎の半量ほどはミキサーにかけてペースト状に。果肉がしっかりとしていて煮崩れないので、この様な製法にします。

グラニュー糖を加えてなじませ、一煮立ちさせたら火を止めて一晩休ませる。
翌日再び煮立たせて、グラニュー糖を加える。
ゆっくりと様子をみながら煮詰めて行くことで、素材の表情をより深く見つめることができるのです。

製法そのものは、以前白桃のコンフィチュールの時に触れた、少量づつ糖度を上げる仕込み方に基づいています。こちらから




信州産採れたてシナノゴールドを飴色になるまで煮詰めた自然な味わい。基本的にリンゴは酸味とのバランスを考慮した調理法がほとんどなので、ペーストにしていく製法は、焼き菓子にも使えると確信しました。
2層に仕立てた、ミルクジャムと合わせてお召し上がりください。








林檎の見た目は十分なのに、「錆び」と呼ばれるもののせいで、市場価値が落ちる。傷有るものも同様。前回、栗の時にも話しさせてもらいましたが、ひどく凄くもったいないって感じます。



これはヘーゼルナッツ。キッチンで広げて、スタッフちゃんに見せると、一様に「どんぐりでしょ?」の声。知らなくて当然。ボクだって初めて見るものですから。

やり方は知らないけど、トンカチで指詰めない様に注意して、殻を剥いて。いろんな品種があるので、カタチも大きさもみんなバラバラ。結構な手間でした。

今回の訪問って、おそらくネット検索さえすれば、ここに書き記す位の情報は容易に得られるはず。
それではなく、実際の経験値。容易く知った風に書き記すことよりも大切なことが経験ではないでしょうか?もちろんですが、その苦労や労力の一端を垣間見ることすらも適いませんが、生の声を聞けるだけでも絶対にその温度は違います。

ボクの仕事はその温度をいかに伝えるか?魅力を引き出すか?だと思うのです。
感謝の念をこれからの菓子作りに活かせる様に。日々感謝です。






Rage Against The Machine - Guerrilla Radio


力強いメッセージ性と、ライブでも圧巻のパフォーマンスをするRATM。
90年代、シーンを引っ張っていった彼らの単独ライブに参戦し、えらい目にあったのを覚えてる。

これもまた経験。そして最近のフェスなどではサークルモッシュがトレンド?なのか、これも大概迷惑な感じがしつつ、逆に輪に入りさえしなければ安全だったり。オチないよ、回ってるだけだもん。サークルモッシュだから。




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産地訪問 前編 (第679回)

7月に信州を訪れた際、次回はりんごや栗の収穫の時期にまた、ということで。

前回訪問のブログへはこちらから


念願叶えるべく、再び長野は小布施町に。
今回は栗農家の小林様、そして自社農園の案内を買って出てくれた川上農園様と、小布施の道の駅オアシスで待ち合わせ。

最近はETCゲートも併設された、高速道路サービスエリアと一般道路が繋がっている箇所も増えましたけど、ここもそのひとつ。ほどなく待ち合わせ場所に迎えに来てくださった御二方。なぜかすぐにあの人だ!ってわかる運命的なそれが。。いや、むしろどうして先方様がすぐこちらに気づいてくれたのか?という方が不思議で

自己紹介もそこそこに、早速栗の畑へと向かいます。


千曲川(ちくま川)の河川のほとりに、数え切れない無数の栗林の農道を先に走る軽トラについていき、到着したのが小林さんの畑。ずーっと先まで栗の木が整然と並びます。



最初に見せてもらったのが、銀寄という品種の樹。足元辺りには栗のイガが散乱していて、樹にはイガの開いた栗が顔を覗かせています。



でっかく実る栗は、隣の2個を押し出して大きくなる。これが一級品。

イガの中で育っていく過程で両端の栗を押しのけ膨らむと、この大きさに育つそう。
ふたつ成りのもの、みっつ成りのものもあるのですが、一度このデカいのを見ちゃうと次第に大物探しに。




画像だと分かりにくい。でもホントおっきい!

今年は例年よりも収穫のピークが早く、こんなに早く収穫を終えたのは稀だそう。

猛暑や台風の影響が主な原因だとおっしゃってましたが、ご苦労されますね。との問いには

台風でたくさん落っこちて今年は散々や。
でも自然が相手だから仕方ない。ハハハ


すごく前向きなんです。結果ダメな事抗ってもどうしようも無い。そう聞こえます。
見習わないといけない。ボクもなんだかんだ毎日の中で一喜一憂しちゃいますから。




畑の奥に続く、大ぶりな樹は丹沢。樹齢は20数余年だそう。

樹の見た目で品種の違いは見分けつくのでしょうか? との問いには、正直わからない。との事。畑の区画別で植えてある品種がわかるそうです。でもなんとなく雰囲気で違いを見分けているな。という感じはしましたけどね。



収穫後の剪定については、12月に入ったら行うそうです。
おおむねの果樹はやはり休眠期に入るタイミングのようですね。
収穫で終わりではなく、翌年に向けての準備に追われる。畑が大きいほど、樹の背丈の高さほど、労力の程、苦労が身に染みて伝わります。吹きざらしの中で、少し強い日差しの中お話を伺いながら感じた事でした。

残念な事に収穫に汗を流すほどの量はすでに無く、収穫済みのものをご自宅にいただきに。
収穫のピークには、家族総出。姪にも手伝ってもらいます。

小布施のお宅は大抵こんな感じなんでしょうか。畑の重機やカゴ、計りや農作業の道具が並んでいます。

譲り受けた栗は、泥に被った鬼殻のもの、殻が少しひび割れたもの。殻剥きすれば剪定も問題無くできるはずなのに、なんだかもったい無い話です。もちろん立派なものばかり。



これは虫食い。穴が空いてるでしょ?

手に取ってジッと見てると、ひょっこりと覗くヤツが… はい、

こんなのは取ってくれない。(買い取ってもらえない) 昔は売れたのにねー。との事でした。
最低限の農薬に留め、枝の剪定から収穫の際の剪定、中腰での作業。落下したものしか収穫してはいけない。そんな小布施のルールもあるようです。
やはり現場でしか聞けないお話もできるのが醍醐味。当然、栗への愛着もひとしおな訳です。




小林さんに別れを告げて、次なる目的地、川上様のりんご園に。
ぶどうの収穫はほぼ終わっているとの事だったので、これから収穫を迎える秋映が主体の畑へ。


小布施の市街地を抜けて、程なく山の裾野に広がる一角のりんご園に着きました。



畑の西側には香りの良いシナノゴールドの樹が。このりんごは本当に香りが漂うんです。他の品種には無い特徴ですね。

まだ色づきの早い、ふじが奥に広がり、東側には秋映、少し奥にシナノスイート。実に4品種が並びます。




りんごの枝は少し低い位置に、横に広がるように剪定されていて、過去に数度訪れたりんご農園の樹よりは少し背丈も低いように感じました。

エコファーマーとして減農薬農法に取り組んでらっしゃるので、除草剤は使わずとも綺麗に手入れの届いた畑です。

奥手のふじの収穫が終わったら剪定。2度行い、自然受粉で結実までのサイクルを葡萄とともに栽培されているそうです。

シナノスイート、ゴールドに少し押され気味な秋映。真っ赤な皮が目を引くりんごを見ながら、座談会。座ってません、立ち話ですけど。



ボクはそもそも、秋映が始まると、「あ、りんごの季節の到来だ」ってスイッチが入るタイプなんです。



↑コレはシナノスイート。秋映との色の違いも明確ですよね。

ジューシーで果肉も適度なシャリ感もあるし、5年ほど前だったと思いますが、シナノシリーズが出てくる前はすごく注目を浴びたりんごなのを覚えています。

葡萄についてもいろいろなお話が聞けたのですが、品種別特徴などの各々の好みについて懇々と話したのが主体なのでここでは控えておきます。クイーンニーナの栽培も手掛けているそうですが、今季の収穫は終えたとのこと。残念…

そしてここでも自分の手で確かめながら、色付いたりんごを採らせてもらい、それらをホントに惜しげも無く分けてくださいました!



本当に気前よく、いろんな問いかけに丁寧に答えていただいた川上さんと別れ、今回最後の目的地に向かいます。

次回、後編に続きます。。




素材を持ち帰り、お菓子に仕上げていく。半製品を仕入れて、なんとなく産地限定だとか、最高級だとか。そんな建前よりも実際に目の当たりに、手を触れたり、声を聞いたり。

モノが簡単に手に入るから、情熱の無い、心ないものではなく、その人の顔を思い浮かべながら勤しみたい。
今回の訪問は本当に楽しい時間の連続。だけどやはり想うところもたくさん。自分なら何ができるのであろうか。ココロ震える事も多数でした。
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手づくり菓子工房 ペルシュ

Author:手づくり菓子工房 ペルシュ
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